2018.03.28相模原ライフ子育てママ必見!相模原の教育事情 vol.2

こんな取り組みおもしろい!幼稚園特集 Vol.2

同じ学年にこだわらず、いろんな人との関わり合いを通して「心」や「学び」をはぐくむ。 こういった考え方と取り組みが印象的だった相模原市にある幼稚園2園(星が丘幼稚園、あかね幼稚園)。第1弾に引き続き、今回も編集部が「面白い!」と思った内容にぐっとフォーカスして、独自のピックアップでご紹介します!    

■星が丘幼稚園

いろんな人たちや動物と触れ合うことで、「心」が成長する

いろんな人や動物と触れ合うことで、それぞれの立場でものを考えることができる。ひいては、子どもたちの「相手を思いやる心」や「命を大切にする心」を育むことにつながる!

そうした信念を持っている星が丘幼稚園。園長先生の自宅にある「ミニ牧場」には、ミニチュアホース(4頭)やゾウカメ(3頭)、ゴールデンレトリバーの「ラブちゃん」などの動物がいて、園児たちが触れ合える場としているそうです。

園長先生宅にある「ミニ牧場」。ポニーの「ココ」(手前)「レモン」(後ろ)等と触れ合う園児たち

また反対に、「ラブちゃん」やミニチュアホースたちが定期的に幼稚園の園庭に遊びにやってきて、園児たちとふれ合う時間も設けています。

  • ミニ牧場にいるミニチュアホースの「ミッキー」に乗馬する園児
  • ゴールデンレトリバーの「ラブちゃん」と触れ合う園児たち

ミニ牧場では、馬と接するときには馬がびっくりしないように「大きな声を出さない」、「急に動かない」、「馬のうしろに立たない」など、動物ごとの接し方を子どもたちは自然に学んでいきます。

「いろんな動物と触れ合うことで、子どもたちは命あるものを慈しみ、大切に接することを学びます。そういった体験を重ねることで、相手の立場になって考えられるようになるんです」と、先生のお1人が話してくれました。

  • 「ミニ牧場」にいるゾウガメのアンディーとふれ合う園児。ゾウガメは他にも「トモ」や「ウルトラ」がいる
  • 園内にはヒョウモン・リクガメの「リボンちゃん」が飼われている

同園は、動物だけでなく、いろんな人たちとの交流も大切にしています。

学年の違う園児たちの交流はもちろん、地域の人との触れ合いも活発です。月、水、金の週に3日は園庭を開放し、地域の人々が気軽に遊びに来られます。

また、月に1度の土曜日には、在園児はもちろん、「おやじの会」のお父様方や卒園児、未就園の0歳から2歳までの乳幼児の親子、地域に住まう人たちが自然とたくさん集まるのだとか。

そういったさまざまな年齢の人と触れ合う環境があるからこそ、幼児のうちにかなりの社会性やコミュニケーション能力等が身につくのだそうです。

ユニークな「論語あそび」やヒップホップ

今回の取材では、テンポよく言葉を楽しむ「論語あそび」やヒップホップといったユニークなプログラムにも目が留まりました。園児のみんなが、のびやかに元気よく論語を読み上げる姿は圧巻!大人顔負けです。

また、各種の運動能力を育てる「体育遊び」は、何十年も前からやってこられたそうですが、ヒップホップはリズム感や表現力、さらに体力向上をめざし、2014年に導入。20分~30分ほど躍るため、見た目以上にハードで体力がつきます。

みんなの笑顔がひときわ弾けるヒップホップの時間。振り付けはパパイヤ鈴木さん監修

園長先生
「論語やヒップホップをはじめ、多くの取り組みは『園児が楽しんで参加する』ことが、すべての活動の基本です。いろんなことにチャレンジする中で、その子の得意を伸ばしてあげたい。一見難しそうなことでも、毎日楽しみながら繰り返すことで園児はできるようになることを実感し、できることで一層楽しく心地よくなる。こうした経験が、園児の自ら学ぶ力となり、自立を促す上で欠かせません。先生たちは、園児が楽しく取り組める方法を研究・工夫する。何よりも、これを念頭に努力してくれています

それに、私たちの幼稚園では、開園以来、知、徳、体、をバランスよく育てる「全人教育」や「園児の個性を尊重する教育」を大切にしてきました。そのためには、日々起こるさまざまな状況に、より細やかに対応しなければなりません。そのため、担任の先生任せではなく、教職員全員で情報を共有し、その子の状態や環境に合わせて、みんなで細やかに対応する『ティーム教育』に力を注いでいます

  • 「論語あそび」の様子。長文なほど園児は喜ぶのだとか
  • 年長組の「漢字あそび」。短冊の漢字を提示しながら、園児と一緒にお話を読み上げて、お話の内容と漢字を習得していく

●保護者からの声

・漢字絵本や論語あそびを楽しみ、学んだことを家でも声に出して繰り返すなど、自分から取り組む姿に驚いています。また、3歳でも言葉がとても豊かになりました。

・リズム感があまりない我が子でしたが、一年もしないうちに音楽に合わせ、リズムよく体 を動かし、楽しんでいます。

※園独自のアンケート調査より一部抜粋

≪星が丘幼稚園の概要は園のホームページをご覧ください≫
http://hoshigaoka.ed.jp/

■あかね幼稚園

遠足やお泊り会をはじめ、何ごとも子どもたちが会議(話し合い)で決める

子どもたちの「自分が~したい」、「自分で~する」という主体性を、何よりも大切にしているあかね幼稚園。「~しなさい」という大人時間でことを運ばせず、子どもたちの自主性や考えを尊重しゆったりとした子ども時間を大切にしています

子どもたちが「したい!」と言って始めた「ひな遊び」

なぜなら、「子どもたちが欲するときに、自然と学びが得られる」と考えているから。

「文字を覚えたり、数字を数えるのも、システマティックにはしません。もちろん、環境は大人たちがきちんと設定しますよ。けれども、あくまで子どもの自主性を尊重します。お店屋さんごっこの会計や、大好きな人に宛てるお手紙書きなどの時間で、子どもたちは自然とスキルを覚えていきますね」と園長先生。

  • 年長の「つばめさん」をお別れ会で送り出すために、年中さん年少さんが書いた言葉「つばめさんありがとう おわかれかい」
  • 園児が「おかあさんのために」と制作をはじめた編みかけのマフラー

同園の大きな特徴は、何といっても「園児の自立」に重きをおいた教育です。いろんな場面で、「自分で決めること」を大切にしています

 

たとえば子どもたちが何かを決めるとき、多数決はしません。そこで思考が止まってしまうからです。みんなに意見を述べさせて、話し合いで合意する手法を取ります。まさに民主主義!でも、大人でさえ「話し合いで解決」というのは簡単にいかない場面があります。それなのに、園児たちが本当に話し合いで平和的な結論を導きだすのでしょうか?疑問に思って聞くと、園長先生が1つの楽しいエピソードを教えてくださいました。

  • 子どもたちの話合いは、日常的な風景

それは、年中組の「遠足会議」でのこと。子どもたちが、自分たちのグループの名前はどうするか、話し合っていたときでした。前回のグループは動物の名前だったので、今回は花の名前で募集したそうです。

4つのグループがそれぞれ話し合い、13分ほどで先に3つのグループの意見がまとまったそうです。「ひまわり」「コスモス」「あじさい」です。でも、残る1グループの意見がなかなかまとまりません

そのグループでは「バラ」の案に多くの園児が賛同していたものの、Kくんだけが1人「バラはイヤだ。ひまわりがいい」と主張していました。

「遠足会議」の様子

すると、他の園児たちは「バラにはいろんな色があるよ」、「香りがいいよ」、「美しいんだよ」「お風呂に入れてもいいんだよ。バラ風呂ってキレイなんだよ」、「王子さまが口にくわえている花もバラなんだよ」と口々にバラの良さをアピール。Kくんをみんなで説得しはじめたのです。

Kくんも、それに負けじと「家に植えているお花もひまわりだよ。黄色が好きだから、僕はひまわりがいい」と応戦します。

そこで他のメンバーが、「Kくんの家でも、黄色いバラを植えてみればいいんじゃない?」と返すと、黙るKくん。すかさず女児の1人が、魔法をかけるように手をヒラヒラさせて、「バラが好きにな~れ、バラが好きにな~れ」と言い出し、他の園児たちもマネを始めます。たたみかけるように男児の1人が立ち上がり、「バラしかない!バラしかない!」と踊り出しました。

話し合いを始めてからすでに40分が経過。園児たちの中にも「早く決まってほしい」という空気感が出て、だんだん疲れが見えてきました。担当していた先生が「いろんな意見もあっていいけれど、ときには他の人の気持ちも考えてゆずるのも大切だと思うけれど」とKくんに声をかけました。

Kくんはしばらく考えていましたが、「じゃあ、バラでいいよ」と最終的に合意したそうです。その瞬間、ほかのメンバーは「やったー!」と手を上げて歓喜の声。一件落着しました。Kくんの粘りのおかげで、ほかのみんなは頭を巡らせながら、今持てる知識や言葉を総動員して考える時間を持つことができたのでした。

話し合いは、ときに後から出る1人の意見に多勢が賛同し、全体がひっくり返るほど劇的なことも起こります。それがまた面白いところでもあるのです。

こんなとき、同園の方針は「イヤイヤと言うばかりでは、みんなに通用しない。みんなが納得できるように、イヤな理由をきちんと言葉で説明してみて」というもの。子どもたちの話し合いのレベルがあまりにも高くて、聞いていて思わずうなってしまいました。

年長さん、年中さん、年少さんみんながお互いに刺激し合って成長するしくみ

子どもの自主性をはぐくむ上で、同園ではもう一つおもしろいしくみがあります。それは、学年の違う園児たちが自然と交流できる「場づくり」です。これには、年上の園児、年下の園児それぞれの成長を促す狙いがあります。

年長児「つばめさん」たちを送る「お別れ会」練習の様子。年長さんは、「今度は、あなたたちがよろしくね!」と思いを託し、下の代の子たちはその気持ちをしっかり受け取る

たとえば、「ホームクラス」というものがあり、現在は年長さん12人、年中さん10人が在籍しています。ホームクラスでは、4月~5月の連休明けくらいまで、学年の違う園児たちが一緒に過ごします

年中さんといえば、まだまだ自分中心にものを考える時期。でも、年長さんとなると、自己から他者にも目を向けられる時期。その両者が一緒に過ごすことで、さまざまなメリットが生まれるそうです。たとえば、年中さんは他者を思いやる心がはぐくまれます。年長さんは下の子に教えることで、「やってあげて嬉しい」と自尊心や自立心がさらに育ちます。同年代のいわゆる「同じパワー」同士では生まれない思いやりが育まれるのです。

ほかにも、年長さんと年少さんが一緒に行動する機会も作っており、年少さんの初めてのお弁当タイムでは、年長さんが年少さんにマンツーマンで食事などのお作法を教えるそうです。これにより、年長児はお世話した年少児の登園を心待ちにし、不安を抱えて登園する年少さんたちは人間関係が落ち着き、心の安定にもつながるのだとか。

  • ロッカーは、年長→年中→年長→年中という並び
  • 学年の違う園児が自然と触れ合えるようしている

園長先生
自分自身、自立、自己主張といった『自』を尊び、『勁(つよい)』をはぐくむ。これをとても大切にしています。『勁い(つよい)』とは、逆境にも負けない強さ、たとえ倒れても起き上がってくる強さのことです。だからこそ、子どもたちが自主的に取り組む『遊び』を重視しています。集中力や達成感、決断力をはぐくんでくれるのが遊び。遊びこそ、主体性のすべてが入っているし、人間の総合力を磨いてくれると考えています

子どもが自分たちでものごとを決めていくことの強さ、そのすごさはずっと感じてきました。たとえば、年長遠足会議のとき、『電車が混んでいたときにはどうしますか』の設問に対して、『電車の中で騒いだらまわりの人に迷惑だよ』、『走り回ったら危ないよ』、『銀の棒につかまる』等の意見が出ました。当日実際にそのような状況のとき、スッと静かに立っている我が園児たちを見たときは感動しましたね」

年長さんと年少さんがペアになってお散歩をする

●保護者からの声

・子どものことを否定せず、意志を尊重し考えて行動するように促してくれるので、子ども同士も互いを知り合って共有してくれる環境にあった。

・一人っ子の我が子が、異年齢クラスの中でお兄さんお姉さんのいる体験ができたり、学年があがるとお兄さんお姉さん役ができて心の中が広がったのがよかった。

・子どもに「ママは幼稚園の時どうだった?」と聞かれ、“ちょっと悲しかったエピソード”を話したら「ママかわいそう。ママもあかね幼稚園に来ればよかったのに」と言われ我が子の園生活は充実しているのだなと感じた。

※園独自のアンケート調査より一部抜粋

≪あかね幼稚園の概要は園のホームページをご覧ください≫
http://akaneyouchien.jp/

◆取材を終えて(ライターから一言)◆
アプローチは違えど、2園とも「子どもの自主性」をはぐくむ取り組み、それも子どもたちの「楽しい」を大切にした取り組みが印象的でした。
自分を大切にすること、相手を尊重すること、自分の意見をきちんと言葉で伝えること、みんなの意見に折り合いをつけていくこと。こういった「自立した人間」の素養をしっかり培ってくれる教育を目の当たりにして、とても頼もしい思いがしました。
2園で育った子どもたちは、きっと気丈ながらも優しさにあふれた大人に成長していくんだろうなぁ。現場を見ていてそう思わずにはいられませんでした。

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